「ブライズヘッド再訪」朗読ジェレミー・アイアンズ

Saltburnを見た後「ブライズヘッド再訪」を読みたくなって朗読版を聞きました。
何人か朗読しているのですが、ここはやはりジェレミー・アイアンズに読んでもらいたくてアイアンズ版を購入。

チャールズは地声そのままですが、セバスチャンの声がすごくセバスチャンらしい。アンソニー・ブランチも似ていた。当たり前だけどとても朗読が上手い。

セバスチャンの栄光からの転落が意外に早く、夢のような時代はすぐに終わってしまう。
後半ジュリアと恋愛してセバスチャンがすっかり忘れ去られてしまうのがなんだか納得いかなかったのですが、「愛し合っているのに宗教に阻まれて結婚できない」状況をセバスチャンでは作り出せないからだろうか?と思いました。

宗教の部分は再読してもよく分からず、臨終に額に油を塗るかどうかであんなに家族が揉めて人間関係が崩壊してしまうとか日本だと平安時代くらいまでではないかと思わされました。

チャールズがあわやブライズヘッドを相続しそうになる場面とかすっかり忘れていた。結婚によって自分のものになりかけたお屋敷に戻ってきたが気づかなかったチャールズと、結婚以外の方法で邸宅を自分のものにしたSaltburnの違いについて考えさせられた。

「三体」の発音ネットフリックス版

自分一人だけの趣味の話題です


「三体」の原作小説の英訳では「三体」がTrisolaris、「三体人」はTrisolaranと翻訳されているらしいのですが、Netflix のドラマ版では英語話者は「三体」をSanti、「三体人」をSantirenと中国語をそのまま発音していた。

英語話者のSantirenのrenの発音がバラバラで、やっぱりrenの発音は非ネイティブには難しいなと痛感しました。

「三体」のアクセントは本来の中国語だとsān tǐで高+低ですが、英語ネイティブの発音を観察すると高+下降か下降+下降が多数派のようでした。

しかし、リーアム・カニンガムさんとベネディクト・ウォンは低+高になっていて、イギリス北部アクセントっぽいSantiだったので、おお!と思った。

 

Netflix版「三体」誰が誰

你們是虫子。
虫に失礼やろうが、と思ったらラストで回収されて良かった。


ネットフリックス版「三体」のシーズン1を見終わりましたが、ドラマの誰が原作の誰に当たるのかよく分からなかったので自分用に整理してみた。原作のキャラクターにはピンインをつけました。

(ドラマ未見の方は以下の文章を読まないようお勧めします)


ウィキペディアに「三体 (2024年電視劇)」の項目ができているので参考にしました。


<オックスフォードの五人組("Oxford Five")>

■ジン・チェン(Jin Cheng):原作の程心chéng xīn。部分的に汪淼wāng miǎo。
いきなり最大のネタバレでごめんね。チェンって姓を英語話者はチャンみたいに発音してたから陳か張だと思ってた。Jinも静かなと勝手に想像してました。まさか程心とはね・・・
ジン・チェンは天才理論物理学者で、ヴェラ・イエ教授の愛弟子。教授のママとも親しく、ご飯を食べさせてもらってたらしい。出身は湖北省湖南省あたり、子供のころ洪水被害にあった。

■ソール・デュランド(Saul Durand):原作の羅輯luó jí。
この役に立たない人はどうして五人組に入ってるんだろうと不審に思いながら見てて、7話の交通事故で「えっあなたが!?」となった。すごい驚きの配役。ドラマ全体を通じてこの人にいちばん驚かされた。本人もすごく驚いていて、そうだよねーそら驚くわと思った。

■オギー・サラザール(Augustina Salazar):原作の汪淼wāng miǎo。
ナノテク起業家。ドラマ中でいちばんまともな人間性の持ち主。ナノテク極細スライサーで死者が出てしまってとても悩むところ、まともな人が一人でも出てきて救われた。

■ジャック・ルーニー(Jack Rooney):原作の胡文。
この人もどうして五人組なのかなと思ってたが、《三体III:死神永生》の登場人物だと途中で気づいてこれにもびっくり。原作では名前も覚えてない(自分が)くらいのチョイ役だった気がするが、ドラマでは大抜擢、しかし正直ウザい人物だった。もっと出番少なくて良かったのでは。トマス・モア卿を殴ったところでさらに嫌いになった。

■ウィル・ダウニング(Will Downing):原作の雲天明
急にガンになっちゃって可哀相だけど本筋と関係あるの?ただの同情エピソード導入キャラ?と思ってた。星を買うところでやっと気づいた。《三体III:死神永生》は最初のほうしか読んでないので(・・・程心が自分には無理だった・・・)、改心してちゃんと読もうと誓いました。


<地球防衛関係者>

■トマス・ウェイド(Thomas Wade):原作のトマス・ウェイド。
リーアム・カニンガムさんが常に三つ揃いのスーツ姿で素敵。《三体III:死神永生》の登場人物らしいが記憶にないので自分なりの解釈で楽しめる。

■大史( Clarence "Da" Shi):原作の史強shǐ qiáng。
最終話で突然スパダリ発揮。ダメ息子も最初の方から登場していて、この人が後年あの事件を・・・と感慨深い。
ベネディクト・ウォンマンチェスター訛り(?)が不思議な感じ。中文名が王漢斌だといま調べて初めて知った。ベネディクト・ウォンの両親は香港からアイルランド経由でマンチェスターに移民したらしい。

■ラジ・ヴァルマ(Prithviraj "Raj" Varma):原作の章北海zhāng běi hǎi。
えっ?ただのリア充担当ではなかったのか・・・驚いた。

■蟻:蟻


<地球三体協会関係者>

■葉文潔:原作の葉文潔yè wén jié。
若い頃も老年もとても良かった。

■マイク・エヴァンズ(Mike Evans):原作のマイク・エヴァンズ。
老年はジョナサン・プライスが演じていて、毎日「主と会話している」と言っていた。
ジョナサン・プライスは「2人のローマ教皇」のフランシスコ教皇役のときも「主がよく話しかけてくださる」というセリフがあったし、ゲースロではハイスパロー猊下だったし、宗教的な役が多いね。

■タチアナ(Tatiana Haas):原作の申玉菲shēn yù fēi。
申玉菲は魏成の妻。魏成って数学オタクで気管炎の人か?魏成は出てこないのかな。

■ソフォン:原作の智子zhì  zǐ。
演じているSea Shimooka(シー・シムーカ)はウィキペディアに「下岡希」と記載されてるので日系なのかな。

■従者(Follower):原作の追隨者。ドラマの7話でヴェラ・イエの少女時代と示唆されているらしい。(気づかなかった)

アイザック・ニュートン:マーク・ゲイティスが登場するといきなりBBCっぽくなるな。


文革関係者>

■葉哲泰:原作の葉哲泰yè zhé tài。
三代続く博士の家系を生み出した。

■紹琳:原作の紹琳shào lín。
葉哲泰の妻、葉文潔の母。

■ヴェラ・イエ(Vera Ye):原作の楊冬yáng dōng。
原作では葉文潔は楊衛寧と結婚していたのか(無記憶・・・)。ドラマの葉文潔は未婚のままマイク・エヴァンズの子を産んだので、娘のヴェラは母姓に従って葉を名乗っているようだ。

■唐紅静:批鬥の時に葉哲泰をベルトで殴り殺した紅衛兵

■白沐霖:「沈黙の春」を貸してくれた青年。

■楊衛寧:紅岸基地の技術者。

■雷志成:紅岸基地の政治委員。

 

「地球三体協会(Earth Three-body Organization, ETO)」の中国語表記は「地球三体組織」。この「組織」は「世界衛生組織」(World Health Organization,WHO世界保健機関)と同じ使い方ですね。

 

アン・レッキー短編集が降ってきた

キンドルオーディブルからアン・レッキーの新作Lake of Souls: The Collected Short Fiction が降ってきました。

目次だけ眺めています。
最初の8編は独立した短編で、ラドチ帝国ものが3編、レイヴン・タワーが7編ということでしょうか。

ラドチ帝国ユニバースのThe Creation and Destruction of the Worldを斜め読みしてみましたが、知ってる人物は出てこないようです。
レイヴン・タワー宇宙も丘の力と忍耐や蚊柱様は出てこなさそう。

 

Lake of Souls 
Footprints 
Hesperia and Glory 
The Endangered Camp 
Another Word for World 
The Justified
Bury the Dead 
The Sad History of the Tearless Onion

<From the Imperial Radch Universe>  
Night’s Slow Poison 
She Commands Me and I Obey 
The Creation and Destruction of the World

<From the Universe of The Raven Tower>
The God of Au 
The Nalendar 
The Snake’s Wife 
Marsh Gods 
The Unknown God 
Saving Bacon
Beloved of the Sun

 

Leckie, Ann. Lake of Souls: The Collected Short Fiction 
Orbit.

 

 

早く積読を脱出したい。

「三体」ネットフリックス版

不要回答
不要回答
不要回答

2話まで見ました。リアム・カニンガムさんが出てるから。
原作の「三体」を読んだのがはるか昔でもう内容があまり思い出せないまま見ました。

なんか舞台がイギリスになってるけど・・・
ベネディクト・ウォンが史強なのか。アメリカ人なのにイギリスの北部訛りっぽい。意外とバリー・コーガンの声に似てるな、すごく板についている。などと失礼なことを思っていたらベネディクト・ウォンマンチェスター出身なのですね。アメリカ人だとばかり思っていました、失礼。

ゲームの場面が面白い。中華系がプレイすると周文王や紂王が登場するけど、イギリス人が遊ぶとチューダー朝になるところが個人化されてて良い。
トマス・クロムウェルっぽい衣装の人が出たと思ったらトマス・モアだったところも笑えました。せっかくゲースロ組の制作ならアントン・レッサーを出してほしかった。

日本人がプレイしたら藤原道長とか出てくるのかしら。そして王様は花山天皇


史強が暗い。いつスパダリに変身するのか?
いま急に天から啓示が降ってきましたが、ダーシー(大史)って「高慢と偏見」のミスター・ダーシーのオマージュなのでは?

文革パートの人たちの中国語がすごく標準的。みなさんアメリカ人かと思うのですが、こんなにも標準的なアクセントを保っていられるものなのか。葉文潔は英語もとても上手。

葉文潔が文革で人生に絶望したのは同情するけど
我們的文明已無法自救。
ってメッセージはどうなんでしょう。中国の内輪もめに他の国を巻き込まないで・・・

あとものすごくどうでもいいのですが「不要回答」には「!」マークがついているとばかり思っていたがドラマのディスプレイは平叙文だった。「!」マークの互換数字がなかったのだろうか。

ソルトバーン再訪

アマプラで配信されたSaltburnを見ました。バリー・コーガン(最近はキヨガンと書くのか)とリチャード・E・グラントが出ているという情報以外何も知らないまま見た。

■オックスフォードに入学するオリヴァー・クィック。背後に流れるZadok the Priestの歌詞が"Zadok the priest and nathan the prophet"から "Oliver Quick, long live the King!" (オリヴァー・クィック王に長寿あれ)に変更されてるらしい。冒頭をもう一度見たら確かに歌詞が変わっている。最初から不穏な話だと暗示されていたのだ。

ラドクリフ・カメラの特写に最初はわー「ブライズヘッド再訪」みたい~と無邪気に喜びながら見ていた。
「ブライズヘッド」ではチャールズ・ライダーが「セバスチャンの友人になる前から彼のことは知っていた」と語り、「ソルトバーン」でもオリヴァーが中庭にいるフィリックスを部屋の窓から見つめる。ここはセバスチャンがチャールズの部屋に窓のから闖入してきた件のオマージュか?
フィリックスも、とある事故でオリヴァーに助けられ、オリヴァーの人生に入ってくる。

■指導教員がファーリー(フィリックスのいとこ)に「君のママに憧れていた」と嬉しそうに告白する場面。オリヴァーは大学を卒業したら、この教師のように「フィリックスに憧れていた」一般人に成長する運命だった。ここでオリヴァーがイヤな顔をしているのは、自分はセレブ側にのし上がってやるぜという決意の表れだったのか。

■タキシードを着たオリヴァーにファーリーが「これで本物の人間の男の子と言っても通るな」と意地悪を言う。このセリフが後のドッペルゲンガーの話や仮想パーティでのオリヴァーのチェンジリングのコスプレに通じていると思うとファーリーの勘の良さに背筋が寒くなる。

■オリヴァーの目の前についにソルトバーンが姿を現す。エモいストリングスの伴奏で感情の盛り上がりも頂点に達したところでバーン!と全景が。お屋敷映画はこうでなくっちゃね。

■ロング・ギャラリーのソファに座っている「パパの古いテディベア」名前はアロイシアスか?ここでも「ブライズヘッド」への目配せ。

■フィリックスに「イーヴリン・ウォーの小説みたいな生活だ」と感想をもらすオリヴァー。フィリックスは「ウォーの小説のモデルはうちの一家だよ」となんでもなさそうに答える。ウォーのどの小説かは言及してないので「黒いいたずら」のモデルとかの可能性もある?

■ソルトバーンのロケはノーサンプトンシャーのDrayton Houseで行われた。現在の所有者はStopford-Sackville家だそうで、映画中の「サックヴィルたちはパーティに欠席だ」というセリフはロケ使用へのお礼か。

■リチャード・E・グラントはフィリックスの父サー・ジェイムズ役。
下層民のオリヴァーには何も期待してなかったようだけど、陶芸美術に詳しいと知って、ついに話の合う相手が現れた!と喜んでいるところが可愛かった。一族みんなオックスフォード出身だろうに知的な会話に飢えていたのね。
オリヴァーが家長も美しい母親も姉も篭絡していくところはやはり「テオレマ」っぽいが「聖なる鹿殺し」にも似ている。

■誕生日パーティでのオリヴァーの扮装はインド人の小姓だと思うのですが、なぜか鹿角が生えている。超可愛い。バラシオンっぽい。監督のインタビューを読むと「聖なる鹿殺し」へのオマージュだそう。
しかし迷路の場面でのオリヴァーは半獣=ミノタウロスであり、ミノタウロスを殺して迷宮を出るテセウスでもある。

■サー・ジェイムズが鎧を着られて喜んでたコスプレは「夏の夜の夢」 のテセウス。比喩がいくつも重なっている。
サー・ジェイムズは彼なりに家族を愛していたのでしょう、冷血だけどけっこう善人だった。小切手のシーンのリチャード・E・グラントの抑えた演技が最高。

■墓場のあの場面は嵐が丘ヒースクリフがキャサリンの墓を掘り返すシーンのオマージュらしい。いろいろ気持ち悪い描写の多い映画だった。バリー・コーガンよく頑張った。墓石のフォントを褒めるところがとても好き。solidって何なの。笑っていいところなのか?

バリー・コーガンのアクセントが良く分からなかった。普通のイギリスアクセントか、いっそアイルランド訛りではダメだったのか。

 

とても楽しめる映画でした。最後がチープなスリラーっぽくなってしまうのも、それはそれで面白かった。階級批判に見せかけて安手の犯罪ものだったというオチが良い。

テオレマ [4Kスキャン版]

アマプラに来ていたので見ました。最近「ソルトバーン」を配信で見て「テオレマ」に似てると思ったところなのでタイムリーです。

数十年ぶりに見てびっくり
イタリア映画だった
監督パゾリーニだった

そうかパゾリーニだからあんなに変な映画だったのか。昔見た時は若かったから西洋映画ってこんなものなのかなと思ってたけど、通常とは違う映画だったんだなあ。

ミラノのブルジョア家庭に住み着いた美しいイギリス青年。
起業家の家長をはじめ、一家全員が彼への狂おしい欲望に駆り立てられる。

テレンス・スタンプは確かに美しい。しかし彼を見ただけで狂気に陥ってしまうってイタリア人の心って一体どうなっているのか?
テレンス・スタンプが庭にいるのを見ただけで居ても立ってもいられずに庭中を走り回ったあげく台所で自殺しようとする家政婦がいちばん打算抜きに恋い焦がれてて良かった。

パゾリーニなので脈絡もなく男性の局部がアップになるが、そんなとこよりテレンス・スタンプの美しい顔を映してくれた方が良い。

と思っているうちに開始一時間ほどでテレンス・スタンプは突然立ち去ってしまい、残りの時間はブルジョア一家がそれぞれ懊悩するさまを見せられる。家政婦は宗教的な啓示を得たらしく、奉公はやめて田舎へ帰ってしまう。田舎の人たちが都会から帰ってきた家政婦を物珍し気にただじっと見つめているところが良かった。

いや変な映画だったな、でも日本ではけっこうヒットしたような記憶があるんだけど記憶違いだろうか。自分は夜中にテレビでやってたのを見たような気がする。長年何かを見るたびに「テオレマ」みたいと思ってきたが、ついに本家を再見できたので目出度い。