(1)BBCラジオドラマ「雲なす証言」聴きどころ

ゲーム・オブ・スローンズの記事更新かと思ってきてくださったのでしたら申し訳ない)


いまとてもはまっているBBCのラジオドラマClouds of Witnessの聴きどころについてお話する、といって正しければだが(バーティ・ウースター風*)。



8エピソード。おおむね原作小説通りなのですが、今回はバンターファンを喜ばせてくれる場面がいろいろあります。



エピソード1



(今日聞けばまだ間に合う!)

のんきなオープニングが大好き。キャスティング紹介は主演のイアン・カーマイケルがやってると思うんですが、すごく優しい声。

原作者のドロシー・セイヤーズがどういうつもりでこの小説を書いたのか分からないが、オープニングはお風呂の蛇口から水音がしていて、バンターがピーター卿を起こしにくるところから始まります。何のファンフィクションだよと突っ込みたくなりますね、でもこれがキャノンです。

バンターが「お風呂がわきました」と声をかける。
原作だと

“Good morning, my lord. Fine morning, my lord. Your lordship's bath-water is ready.” “Thanks,” said Lord Peter. He blinked at the sunlight.
Sayers, Dorothy L.. Clouds of Witness (Lord Peter Wimsey Mystery)

とシンプルですが、

ラジオドラマでは

バンター「おはようございます、御前」
ピーター「んーーー?」
バンター「御前のお風呂のお湯がご準備できましてございます」
ピーター「とても爽やかに聞こえるね、もう一回言ってくれるかい」
バンター「(やや大声で)御前のお風呂のお湯がご準備できましてございます」


二回も言わせんなよピーター。
そこへボーイがコーヒーとパンを持ってくる気配。原作だといそいそと風呂を出てコーヒーを楽しむピーターですが、ラジオドラマではバンターに風呂まで持って来させる御前。「そこのバストレイに置いてくれ」とか言ってるので自分はバスタブの中なのだろうか・・・いまだったら立派なセクハラです。

ラジオドラマにはバンターがボーイに「マーマレードつきかね?御前はオックスフォードマーマレードがお好みだ」と無茶な要求をするが相手は「・・・ジャムでいいっすか?」。
「朝食にジャムとは、チッチッチッ」とフランス人の味覚に舌打ちするバンター。という必要性の感じられないオリジナル場面もありました。バンターがとにかく可愛いの。

ピーター卿は空輸で届いたタイムズをバンターに朗読させる。(まだ風呂の中なのでは?)
バンター氏はちょっとハスキーな良い声。


しかしこのドラマでいちばん愛らしいのはフレディ・アーバスノットです。本で読むとちょっとぼんやりしたおぼっちゃんという印象でしたが、ラジオドラマでは完璧なおばかさんです。第一声だけで育ちの良い間抜けとはっきりわかる役者の技量の高さよ。バーティ・ウースターも同じタイプですが、イギリスのある時期を舞台にした小説やドラマにかかせない上流階級のあほぼん、愛らしすぎます。


エピソード1しか紹介できなかった・・・続きは・・・あるかどうか・・・


*「と言ってお分かりいただければだが」「といって正しければだが」というのがウッドハウスの作中人物バーティ・ウースターの決め台詞。このあいだScream for Jeevesというジーヴズ+クトルフのパロディ小説を読んでみたらやっぱりバーティは「といって正しければだが」と言っていたので。と言ってお分かりいただければだが