「サンドマン」オーディオドラマ EP 8 The Sound of Her Wings

ワシントン・スクエア。モーフィアスMorpheus(声:ジェームズ・マカヴォイ)は世をすねた態度で鳩に餌をやっている。

少年が蹴ったサッカーボールをよけもせず片手で受け止めるモーフィアス。
そこへ15から18才くらい(とナレーターが言うのでそうなのでしょう)のとても若い女が現れる。黒髪に白い肌。やせて黒いタンクトップと黒いパンツ。
サッカー少年フランクリンは彼女に一目ぼれ。デートに誘うが「また後で会えるから」と断られる。

若い女はモーフィアスの姉、デスDeath(声:Kat Dennings)。
元気のない弟を心配して会いに来たが、「復讐をとげて宝具も取り返したら何もやる気が出なくなった」と情けないモーフィアスに怒り呆れて、自分の仕事を見せてやる。


The Sound of Her Wingsはサンドマンの中でも出色のエピソードだと思う。
デスは静かに街を歩き、死にゆく人のそばに立って息絶えるのを見守る。
魂が肉体から離れると、そっと翼で包んで死の世界(だと思うが)へ送り出してやる。

繰り返される「私は巨大な翼の音を聞いた」というフレーズ。
黙って耳を傾けるモーフィアスの表情がしだいに和らいでいく。

絵も象徴的な表現方法もとても美しい。
モーフィアスは自分たちエンドレスには果たすべき任務と責任があることを思い出し、燃え尽き症候群を乗り越えるのだった。

最後にワシントン・スクエアへ戻ってきた二人はなごやかに分かれる。
姉は事故で急死したフランクリン少年を連れて去る。


デスがすごく良いキャラクターで、死神といえばふつうは暗い中年男の姿を想像すると思うが、彼女は明るい性格でメアリー・ポピンズって最高だよね、という意外な好みの持ち主。
パンクファッションのそこらへんにいる親しみやすいおねえちゃんって感じで、しかし死者たちにはとても繊細にふるまっている。

彼女が迎えに来てくれるなら死もそれほど恐ろしくはないかも、と思えます。


ここでコミックスの第一巻は終わり。