Doctor Who: Thirteen Doctors 13 Stories 朗読版

ドクター・フーのアンソロジーの朗読版。
13人のドクターを主人公にした13の短編集。こども向けの本です。
もともと2013年に50周年記念として12人のドクターを主人公として出版された本に13人目を追加して再販売したようです。

主人公は同一人物なのに、全員違うキャラクターという不思議な本。
自分は9代目からしか知らないので大丈夫かなと思いましたが、プロの作家がそれぞれ持ち味を生かして趣向をこらした短編集でとても楽しめました。

#1 A Big Hand for the Doctor
1900年のロンドン。腕をなくした1代目ドクターが新しい腕を手に入れるお話。
コンパニオンは孫娘のスーザンです。って孫いたのドクター!驚きました。
スーザンはコールヒル高校に通っていたそうです。クララの勤務先ですね。
1代目ドクターはビクトリア朝の偏屈ジジイでとても尊大で「バー!ハンバーグ!」とか言っちゃうディケンズっぽい爺さん。


#2 The Nameless City 朗読 Frazer Hines
1968年のロンドン。暮れなずむチャリング・クロス。書店のショウウィンドウを眺めている黒髪の若い男。
彼はタートルネックのセーターと赤いスコティッシュ・キルト(つまりスカート)を身に着けているが、ファッショナブルなロンドンだから誰も気に留めない。
そこへ通りがかりの古本屋店主が強盗に襲われる事件発生。若い男はキルトをひるがえして書店主を助ける。かっこいい!
ジェイミーと名乗る若い男、口を開くとすごいスコットランド訛り。
本屋さんはお礼に一冊の本をくれました。ジェイミーは「字が読めないんだけど・・・ドクターが喜ぶかも」と立ち去る。

ロンドンの街頭に立ち尽くすハイランダーって「アウトランダー」みたいです。よくあるシチュエーションなのでしょうか?そしてすべてのスコットランド男はジェイミーって名前なのか?

と悩んでて、はっと気づいたのですが、このジェイミー・マクリモンって「アウトランダー」のジェイミー・フレイザーのモデルになったあのジェイミーですね!!
しかも朗読はジェイミー・マクリモンを演じたフレイザー・ハインズご本人です。すごく良い声、そしてとってもジェイミーっぽいアクセント(当たり前)。でも赤毛じゃないんですね。

古書をターディスに持ち帰ったジェイミー。その本は「ネクロノミコン」で、ターディスは勝手に「名もなき都」へ飛んでいきます。

ドクター・フーハイランダークトゥルフって盛りすぎやろ・・・と 思っていたら黒幕のマスターまで出てきてドクター・フー全部盛り。

ここからネタバレ。

アーカムからどうやって逃れようか知恵を絞るドクター。
「そうだ、ジェイミー、バクパイプを吹いてくれ!」

バクパイプの音に苦しむアーカムたち。
実はクトゥルフは音感にすぐれていて醜い音楽には耐えられないのです。

「それって僕のバグパイプが美しくないってこと?」
「気にするなジェイミー、さあ吹き鳴らせ『勇敢なるスコットランド』を!!!」

宇宙空間に鳴り響くScotland The Brave。もだえ苦しむクトゥルフ。笑いすぎて死にそう。

 

 


#4 The Roots of Evil

みんな大好きトム・ベイカー の4代目ドクター。レインボーカラーの長いマフラーをしている時代ですね。
ピーター・カパルディのドクターは衣装を決めるときに「長いスカーフとかどうだろう、いやバカみたいだな」と言っていました。4代目はなぜロングマフラーなのでしょう、時代でしょうか。

樹上の都市にやってきたドクター。そこの住民はドクターは以前にも来たことがあるという。証拠の彫像を見せてもらうと、蝶ネクタイをしている。
「いや自分こんな蝶ネクタイとかありえんから」と否定するドクター。
しかし人々は「ドクターは「ボウタイはクールだ!」と語ったと記録にある」
どうやらマット・スミスがタイムトラベルしてきていたようです。

と、このようにドクターが過去や未来の自分をディスる小ネタがファンの心をくすぐります。


#11 Nothing O'Clock
ニール・ゲイマンの作品。これが目当てで買いました。
不思議の国のアリスを思わせるウサギが「いま何時?」と聞いてくる恐怖短編。

1980年代に閉じ込められたということなのか(難しくてよく分からなかった)、部屋にデュラン・デュランのポスターがはってあって、ラジオ(当然BBC)からはアーチャーズのドラマが流れ、プリンス・チャールズ(若いころ)やマギー・サッチャーのマスクをかぶった人物が登場する。
マギー・サッチャーの声真似がそっくりなんですが、イギリス人なら誰でもたしなむモノマネなのでしょうか。


#12 Lights Out
宇宙の果てのコーヒー・ショップで連続殺人事件が起きる。
話がいちばんSFっぽかったのはこの作品かな。事件に巻き込まれた若い宇宙人の一人称小説。
ドクターは謎めいた脇役で「イライラさせられる眉毛の男」として登場。


#13 Time Lapse
地球の歴史から2004年が消えてしまった。
「そんなわけないでしょ、ロンドン・オリンピックの年なんだし、えーっと・・・思い出せない」

朗読者のSophie Aldredはすごく上手くジョディ・ウィテカーのドクターを再現している。
さっきまで「彼」だったドクターが何の説明もなく「彼女」の代名詞で呼ばれるようになってて、分かっていてもなかなか衝撃です。

#1では頑固ジジイだったのに、いまや元気いっぱいの若い娘になってるドクター。
私は13代目の"ya? ya?"(みたいに聞こえる*)言い方がとても好きなのです。クリストファー・エクルストンの9代目と同じ訛りだと思うんですが、ぜんぜん違う雰囲気なのが面白い。

 そして本作は正統派タイムトラベルラブロマンスで大満足の作品でした。女性ドクターだとロマンスを導入しやすいのかも。

 

* 「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」の「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」って何だろうと長年疑問でしたが、もしかしてリバプール訛り?といま閃いたが原題は"A Hard Day's Night"で「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」とは無関係だった(いま検索して知った)。


Doctor Who: Thirteen Doctors 13 Stories
By: Naomi Alderman, Malorie Blackman, Holly Black, Neil Gaiman, Derek Landy, Charlie Higson, Alex Scarrow, Richelle Mead, Patrick Ness, Philip Reeve, Marcus Sedgwick, Michael Scott, Eoin Colfer
Narrated by: full cast
Length: 14 hrs and 17 mins