「ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル」朗読版

スザンナ・クラークの「ピラネージ」が2021年の女性小説賞 Women's Prize for Fictionを受賞したそうです。

読んでみたいとは思うものの、まだクラークの前作「ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル」すら読んでいません。まず邦訳のあるほうから読むべきでは、と思っていたところ、Jonathan Strange & Mr. Norrellがオーディブルの3ポンドセールに出ていたので聞いてみました。日本語訳を読まないままのチャレンジです。

ダウンロードしたら32時間半もあって青ざめました。
しかも最初の1時間が何度聞いても頭に入ってこない。10回くらい聞き直したと思うが、とにかく入り込みにくい小説で、もうだめかもと諦めかけました。

しかし、ジョナサン・ストレンジの父親と召使のエピソードあたりから猛烈に引き込まれて、あとは毎日ずーーっと聞いていました。(理解できない部分は何度も戻って聞き返していたため合計数百時間はかかったのではないか)

一冊の本としてまとめられているものの、実際には数冊の小説がランダム配置されたような不思議な構成になっています。

主役のノレル氏はすごく感じ悪い自分勝手な男で、嫌いになって当然のキャラです。でも何十年も孤独に研究生活を送ってきて、やっと魔法について語り合える同好の士を得て嬉しくてたまらず、相手の都合も顧みずべらべらと知識を披露し、しかし自分の蔵書は貸したくないところとか何だか愛らしく思えて嫌いになることができなかった。
自分が悪いせいでストレンジと仲たがいして自分が悪いくせにしょんぼりしている場面が可哀相すぎた。

そしてまともそうに見えるもう一人の主役ストレンジが後半恐ろしい変貌をとげる場面の迫力。
最初の印象はヨークシャーの学究たちが趣味の魔法研究発表を楽しむ小説だったのに、どんどん違う物語になっていくところに驚かされました。

ラストはちょっとドクター・フーみたいで、こういうのがイギリス式ロマンチックなのかな。

 

あと、小説はどこに注が配置されているか分からないけど、朗読版は本文のセンテンスが終わった直後に注が朗読されるので、疑問がすぐ解決されるのが良かった。ただ、どこまで注でどこから本文に戻るのかちょっと分かりにくかったかな。注の朗読だけで30分も続いて、もともと何の話をしてたか思い出せないこともあった。とにかく変わった小説でした。

 

Simon Prebbleの朗読も小説の雰囲気にぴったりで、特にチルダマスの召使か紳士か分からない不敵な感じが良かった。

次はPiranesiを買ってあるので(ちょうど3ポンドセールに出ていたのでポチっておきました)正月休みに楽しみます。

 


Jonathan Strange & Mr. Norrell
By: Susanna Clarke
Narrated by: Simon Prebble
Length: 32 hrs and 29 mins