Her Smoke Rose Up Forever朗読版

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアのHer Smoke Rose Up Foreverをオーディブルで聞きました。Adam Grupper(男声)とDina Pearlman(女声)が交互に朗読。


1990年に出版された作品集で、日本語訳は出ていませんが収録されている小説はいずれも翻訳があります。
この本を編集した人はあまり人間好きではなかったのか、チョイスが暗い。ティプトリーにはもっと楽しい作品もあるのに、なぜこんなに破滅的なのばかり選んだのでしょう。


しょっぱなから"The Last Flight of Dr. Ain" (「エイン博士の最後の飛行」)です。人類滅んどるがな。
2つ目は"The Screwfly Solution"(「ラセンウジバエ解決法」)。人類また滅んどるがな。

この調子でダークな作品が続き、ついに"The Women Men Don't See" (「男たちの知らない女」)。男女交互に朗読なので、この作品はAdam Grupperさんが担当。この人がまた、いかにもアメリカの男らしい白人の見本って感じの声とアクセントなんですよ。このヘミングウェイっぽいマスキュリンかつパトロナイズな発声で「男たちの知らない女」を読んでしまうのです。聞いててぞぞっと総毛だつような抜群の効果。プロだからどんな仕事もこなすのだろうが、これ読むのきつくなかったのかな。

"On the Last Afternoon"(「最後の午後に」)もアダムさんで、聞き終わったあとは「お疲れさま」と朗読者の肩を叩きたくなりました。


一方、女性のDina Pearlmanさんも楽ではありません。"The Screwfly Solution"(「ラセンウジバエ解決法」)、"The Girl Who Was Plugged In" (「接続された女」)と苦しい作品が多く(収録されてるのは苦しい作品ばかりなのだが)、SFにおける女の人生って・・・と悲しくなったのではないかと心配です。オーディブルは朗読者のメンタルケアもしてあげてほしい。

 

オーディブルティプトリーにはTen Thousand Light-Years from Homeもあるのですが、出版がペンギンのためかイギリス英語の朗読なので躊躇しています。ロンドンっ子が"Beam Us Home"を読んだらスター・トレックというよりドクター・フーになってしまわないのだろうか。

 

Her Smoke Rose Up Forever
By: James Tiptree Jr.
Narrated by: Dina Pearlman, Adam Grupper
Length: 23 hrs and 55 mins
Unabridged Audiobook
Release date: 14-07-20
Language: English