ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア伝記 聴き始め

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの伝記 James Tiptree, Jr.: The Double Life of Alice B. Sheldon (Julie Phillips)をオーディブルで聴き始めました。
日本語訳が出るのをずっと待っているのですが、いっこうに出版される気配もなく、待ちきれずに英語版に手を出しました。

 

まだティプトリーになっていない若いアリスの段階ですが、少女時代からすでに波乱万丈で大人になるまえに普通の人の数人分の人生を生きています。親にアフリカを連れまわされ、社交界でちやほやされる子供時代がべらぼうに面白い。が、本人は大変だったことでしょう。
いままで日本でティプトリーの人生がどの程度紹介されてきたか分かりませんが、自分は小説のファンのわりに彼女本人について調べてみようと思ったことがなく、ハヤカワ文庫の解説程度の知識しかありません。

今回この伝記によって、彼女がとても若くして結婚して、母になる自覚もないうちに妊娠、中絶していたことを知り、けっこうショックでした。ティプトリーの小説には生殖と死が同時に登場する作品が多いのは、若い頃の経験が影響しているのでしょうか。
アーシュラ・K・ル=グウィンも若いときの妊娠・中絶について率直に書いていましたが、ティプトリーはそれを読んで、妊娠経験どころか性別すら隠している自分と比べたりしたのでしょうか。

この本によるとアリスは女性に性的に魅かれていたのに、レズビアンに激しい嫌悪を感じていたため、女性と親密な関係になれなかったようで、一人の人間に複数の人間が詰め込まれているような混乱したセクシュアリティの持ち主だったように思えます。

 

とてもとてもとても面白い本なので、一日も早く日本語訳が出ることを祈っています。

いちおうキンドル版も買ってあるのですが、朗読を聞いたあと読み終わるまでには相当かかりそう。