『となりのヨンヒさん』韓国文学の日本語訳文体

『となりのヨンヒさん』(著者:チョン・ソヨン 訳者:吉川 凪)をジェイムズ・ティプトリー・Jr.のような作風だなと思いながら読んでいたら「アリスとのティータイム」が平行宇宙でアリス・シェルドンに会う話で驚いた。
のですが、思い返せばアリス・シェルドンの登場する作品があると聞いて『となりのヨンヒさん』を読んだので、驚くようなことは何もありません。自分の記憶力のなさに驚くのみ。

「アリスとのティータイム」は主な登場人物がアメリカ人女性です。
しかし、日本語の訳文がとても「韓国文学を訳したときの日本語」で、会話がアメリカ女性っぽくないのが面白かった。
だけど韓国語を忠実に訳したらどうやってもこういう文章になるんじゃないですか。

↑模倣下手だけどこういう感じの文体

もしこの作品が英語で書かれていたら、日本語の訳文はもっと「アメリカSFを訳したときの日本語」になると思う。
日本語と韓国語の近さや、近すぎるゆえの翻訳の悩みどころなどに思いをはせながら読みました。


どの作品もとても好きで、表題作の「となりのヨンヒさん」のラストは異星人コンタクトSFの中でも出色の美しさ。
韓国SFが読める時代になってよかった。