マーダーボット#7 System Collapse

マーダーボットダイアリーSystem Collapse(The Murderbot Diaries#7)をやっと読み終わりました。

(とてもネタバレしています)

 

今回はいつもに増して設定が分からなかった。
時系列としては「ネットワーク・エフェクト」の続きだと思う。マーダーボットはARTの大学チームと行動しているので、ついにプリザベーションとはお別れしたのかと思ったら、ドクター・メンサーも登場したのでちょっと驚き。大学とプリザベーションが合同で惑星調査をしているらしい。そしてメンサーは首長を退任したようだ。

プリザベーションとミヒラ大学の両方のキャラクターが全員登場するので、一人ずつの持ち時間が少ない。そして割と性格が似ている人が繰り返し登場するので、誰が誰だったか分からなくなってくる。ラッティ以外はあまり区別がつかなかった。

今回は入植者が絶滅した惑星の調査。かつてのコロニー跡に生存者がいるらしく、彼らを救出して、できればプリザベーションに加盟してもらうのが目的です。
しかし、コロニー跡にはコーポレート・リムが先回りしていた。生き残りたちは最近の宇宙トレンドを知らないので、企業に騙されて労働契約とは名ばかりの奴隷契約を結んでしまうかも知れない、がんばれマーダーボット!悪の企業から入植者を守れ!という内容でした。

東アジア人としては、江戸時代末期の日本や清朝末期の中国が列強から開国を迫られ、不平等条約を結ばされたことなどを想起してしまいます。
でもたぶん作者のマーサ・ウェルズはアメリカの奴隷貿易のメタファーとして書いてるのではないか。そしてコーポレート・リムとプリザベーションの対立はアメリカの南部連合と連邦の奴隷解放をめぐる戦いの比喩なのでは。 

そうか、マーダーボットって解放奴隷だったのかと思いながら読みました。黒人の解放奴隷が自由の身になったあと他の奴隷の逃亡を手助けしたように、マーダーボットも他の人間や警備ユニットの逃亡を助けている。

マーダーボットがミキだけは助けられなかったのは、ミキが日系だったせいなんだろうか。ご主人様(会社)のために自分を犠牲にする日本人はマーダーボットにすら救えないという作者からのメッセージか。

そういえばミキのご主人様はミキを家族扱いして可愛がっていたが、最後は自殺させてしまった。読んだ時になんかマダムバタフライみたいな日本情緒あふれる犠牲精神だと思ったのが今となっては納得できる。