「サンドマン」オーディオドラマ EP 10 Men of Good Fortune

告白します。ぼんやり聞いていて「なぜこんなにホブゴブリンが何度も出てくるのだろう。夏の夜の夢の話はまだなのに?」といぶかしく思っていました。
いまキャスト表を見て「ホブ・ゴドリング」が主役と気づきました。何を聞いてるんだっていうかコミックスの何を読んでいるのか?この程度のリスニング能力です。
今回の「幸運な男」はコミックスでは「人形の家」のあとになっています。順番を変えた理由は何かな。

 

1389年 イングランドのとある村。一軒のタバーンに身なりの良い女と男が入ってくる。
デスDeath(声:Kat Dennings)は弟のモーフィアスMorpheus(声:ジェームズ・マカヴォイ)に人間社会を見学させてやろうとしているようです。

飲み客たちの話題は「死」。誰もが自分の噂をしているのでデスは上機嫌。
コミックスではチョーサーが登場して自分の体験を話すが、オーディオ版には出てこないみたい。このエピソード自体が「カンタベリー物語」風の宿屋で話を聞くスタイルになっていますね。
モーフィアスはデスに「妖精たちが地上を去ると通告してきた」と話しかけるが、デスは人間たちに気を取られている。
妖精たちがイングランドから去るエピソードは「夏の夜の夢」に再び登場する。
モーフィアスは妖精を引き留めたいようです。

ホブ・ゴドリング(Hob Gadling 声:Mathew Horne)は「人間は誰も死ぬ必要はないんだ。自分は死ぬ気はない」と声高に話している。
デスはモーフィアスに始末をまかせて去っていく。
モーフィアスはホブ(本名ロバート)・ゴドリングに「もし永久に死なないのなら、お前の経験を聞かせてくれ。100年後に会おう」と約束する。酔客たちは冗談だと思うが・・・

こうして100年ごとに不死の人間と夢が同じ居酒屋で会うことになる。
建物や衣装の移り変わりがとても興味深い。オーディオ版でもナレーターのニール・ゲイマンが詳しく描写してくれて楽しめる。


1589 キット・マーロウとウィル・シェイクスピアが居合わせる。「君みたいに書けたらなあ」とマーロウを崇拝するシェイクスピア可愛い。
モーフィアスはシェイクスピアに偉大な戯曲を書いてみたくないかと訊ねる。この時の依頼の結果は「夏の夜の夢」のエピソードで語られる。

ホブは幸運に恵まれ、薔薇戦争で儲け、サー・ロバートの称号と妻子を得て繁栄している。
エリザベス女王が自宅に泊まりに来たり(「オーランドー」の冒頭みたい)得意満面。
絶望の時期もあるが、彼は死を拒み続け、人生を楽しみ続ける。

久しぶりに会ったら「サー」になってたというのも「オーランドー」にあったネタ。シェイクスピアも出てくるし、共通点が多いですね。


1789 モーフィアスを悪魔と勘違いした女性が登場。レディ・ジョアナ・コンスタンタイン(Lady Johanna Constantine 声:Joanna Lumley)ってジョン・コンスタンタインのご先祖なんでしょうか。
レディ・ジョアナはもっと後のほうの巻でまた出てくるんですが、住居がウィッチ・クロスって設定になってた気がする。モーフィアスはフランス革命の時期にレディ・ジョアナにある依頼をするのですが、偶然知り合った人間を便利に使うのが上手いモーフィアス。

 

1889 ホブはなぜモーフィアスが自分と会い続けるか言い当ててしまう。「寂しいから友達がほしいんだろ」。
怒り狂うモーフィアス。ここの本音を突かれて逆上するマカヴォイの演技最高です。

サンドマンって主役があまり活躍しないエピソードも多く、意外とモーフィアスの出番が少ないのです。この話では久々にマカヴォイの魅力をじっくり楽しめる。本当に演技がうまい。

もうホブ(いまはボブ)と絶交かと思ったが、1989にもちゃんと現れる夢の王。
「友達を待たせるのは礼儀に反するからな。一杯やろうか?」

あー素敵なオチ。

このエピソードは音楽も時代にあってて、すごく癒される。

エリザベス朝の衣装が一番好きかな。でも奇妙なパンクスタイルも似合ってる。

 
Arthur Darvill AS William Shakespeare
Mathew Horne as Hob Gadling
Joanna Lumley as Lady Johanna Constantine