鶴見篤四郎とゾシマ長老(『ゴールデンカムイ』ネタバレあり)

(漫画『ゴールデンカムイ』の最終話までのネタバレがあるのでご注意ください)

まだ続いている『カラマーゾフの兄弟』と『ゴールデンカムイ』の登場人物比較。
最初は鶴見はフョードルなのかと思いながら読んでいたのですが、どちらかというとゾシマ長老なのでしょうか。


■ゾシマ長老
・兄がいた
・地主の出身
・ペテルブルクの陸軍幼年学校出身
・学校を出て将校になり、四年間軍務に服す
・助言を求めて人々がやってくる。長老のもとを去るときは幸せそう
・ドミートリーに会ってひざまずく

(漫画『ゴールデンカムイ』の最終話までのネタバレがあるのでご注意ください)

■鶴見篤四郎
・家族構成不明だが篤“四”郎と名付けられたのは兄の存在を想像させる
・越後長岡の名家の出身
・中尉ってことは陸軍士官学校を出てるんですよね?
・将校となり陸軍で軍務につく
・助言というか人をたらしこむのがうまい
・誰かにひざまずいたりしなかったっけ?これから動乱の運命を生きる人にひざまずくのはなんだか鶴見っぽいと思ったんですがただの気のせいかも

ゾシマ長老って若い頃は意外にやんちゃです。女性関係も華やか。ゾシマ長老とフョードル・カラマーゾフは同じ日に死んでいるので、この二人もまたカラマーゾフの人々にとっては表裏一体の存在だったのでしょうか。
鶴見の中にもゾシマ長老とフョードルの両方が息づいていたのだろうかと考えさせられます。


(漫画『ゴールデンカムイ』の最終話までのネタバレがあるのでご注意ください)

自分の考えるところでは、鶴見は奉天のあと傷を負い仮面をかぶった場面で、27連隊の神になったのだと思います。部下たちは鶴見を崇拝し、彼のために命を捧げる。
札幌の教会に入った鶴見は祭壇を背にして座ります。これは彼がアシリパたちに対しても神の位置を占めることを暗示しているのでしょう。(鶴見の座る椅子にはご丁寧に十字架まで彫り込まれていて、彼が人の世の罪を一身に背負う結末も予感させます)
ここで鶴見は27連隊の小さな神から物語全体の神へと変化し、悪い神、殺される父となって教会を後にしたのではないでしょうか。

おそらくもともと鶴見は『ゴールデンカムイ』全体の神で、しばらくのあいだ27連隊に遊びに来て、神格を高めるさまざまな行為をしていたのでしょう。神としてじゅうぶん育ったら、物語の本来の目的どおり神送りを受けて去っていくのが筋なのです。

このあと鶴見に起きることは、彼個人にも部下たちにもどうにもできない、物語を終わらせるための大きな仕掛けの一部なのでしょう。


と考えて自分の苦しみをなだめるようにしています。でも悲しい。