宇佐美時重とイワン・カラマーゾフ(『ゴールデンカムイ』ネタバレあり)

(漫画『ゴールデンカムイ』の最終話までのネタバレがあるのでご注意ください)

今日は宇佐美とイワンの次男比較。
似ている部分を箇条書きにしました。大きく違うところには下線を引いています。


■イワン・カラマーゾフ
・フョードル・カラマーゾフの次男
半ば無意識のうちに,父フョードルの死を望んでいた
無神論
・スメルジャコフに対して嫌悪を感じながらも愛想よく話をする
・スメルジャコフに父殺しの教唆をする

(漫画『ゴールデンカムイ』の最終話までのネタバレがあるのでご注意ください)

 

■宇佐美時重
・鶴見ボーイズのうち上から二番目
両親との仲は良好
宗教は不明だが鶴見を崇拝している
・尾形にイライラしながらも積極的に話しかける
・尾形に弟殺しをけしかける&父殺しを手伝う

 

 


宇佐美はとても説明に困るキャラクターですね。
鶴見ボーイズの中では理性的でまともな性格に見えたのに、終盤で突然異常さの椀飯振舞。もう変態には慣れたと思っていたのに驚かされました。
イワンのほうも「人類の罪の連帯性」や「子供には罪がない」「神がいなければ、すべてが許される」という独自の理論で掴みにくい人柄です。


ところで宇佐美は非常に際立ったキャラクターなのに、尾形と一緒にいると、半分くらいに薄くなってしまうような、尾形の陰のようになってしまうと感じられて、不思議に思っていました。
カラマーゾフの兄弟』の解説を読んで「イワンとスメルジャコフは表裏一体」という説があると知り、そうか、宇佐美と尾形も表裏一体の存在なのかと膝を打ちました。菊田が「うちの上等兵たちはどうなってるんだ」とぼやくシーンがありますが、鶴見小隊の中でも二人で一組の存在と見なされていたのでしょう。

カラマーゾフの兄弟』で父殺しを実行するのはスメルジャコフですが、スメルジャコフは「イワンからゴーサインが出たから殺した、二人の共犯だ」と考えている。
尾形も宇佐美がいなければ弟と父に手を下さなかったかも知れない。宇佐美と尾形にも罪の連携があったのですね。


おまけ
イワンは悪魔の幻覚を見るようになるのですが、その悪魔がこんなことを言っています。

悪魔の話「田舎の娘どもが、よくやるいたずらがあるでしょう。零下三十度の寒さのなかで、他所からきた新入りに斧を嘗めさせるいたずら。一瞬のうちにべろが凍りついて、斧からそいつを剥がそうとすると、そのバカ、舌の川がひんむけて血まみれになる」

カラマーゾフの兄弟
ドストエフスキー/亀山 郁夫翻訳(光文社古典新訳文庫

 

鯉登の悲劇もカラマーゾフで予言されていた。カラマーゾフすごーい(鯉登風)